王族に対する|最高の礼(カーテシー)をして、私は顔を上げた。

「マチルダ様。申し訳ございません。私はハビエル・クラレット様の執務室で待つようにと指示されておりますので、特にご用事がなければ、これにて失礼いたします」

 まるで、親の仇でも見つけたかのような憎々しげな目付き彼女の事を、真っ直ぐに視線を送り私はそう言った。

 庇ってくれていたロイクさんは振り向いて、不思議そうな表情をしたので私は彼に黙ったままで頷いた。

 ここでハビエル様の秘書官である彼が何かを言えば、ややこしくなることは私にだって理解出来る。

 ロイクさんがすぐに解雇されてしまったら、困ってしまう。何も言わなくても、私の言いたい事を察してくれるくらい有能だもの。

 そして、私はマチルダ様の方へと、一歩踏み込んだ。私の正当な言い分に文句があれば、言えば良いのにと思って。