ロイクさんも早足だけれど、私も黙ったままで彼に付いて歩いている……端から見たら、変な二人になってしまっているけれど、仕方ないわ……!

 そして、私たちはやたらと豪華なお城のお手洗いに辿り付き、無事に用を足すことが出来た。手を洗ってハンカチで手を拭き、私はお手洗いを出た……ら、そこに仁王立ちしたお姫様と対峙することになってしまった。

「……あら。久しぶりね。アヴェルラーク伯爵令嬢」

「お久しぶりでございます……マチルダ殿下」

 そこまでお久しぶりでもないのだけど、彼女の体感時間からすると長かったのかもしれない。これまで、完全排除に成功していたハビエル様の近くに居る異性が、排除出来ていない状態だものね。

 私の前へと立ちはだかったロイクさんは、お手洗い前で待ってくれていたのだけれど、ご本人登場にどうしようもなかったのね。ごめんなさい……私がお茶を飲み過ぎてしまったばっかりに。

「ハビエルお兄様の邸に住んでいると、聞いたけれど……?」

 マチルダ様の眼光は鋭い。私が何の覚悟も出来ていなければ、裸足で逃げ出していたはずだ。

 けれど、残念ながら私はもう……ハビエル様と結婚したいと、そう決意してしまっていた。