これはテキーラとライムジュースを合わせたフローズンマルガリータ。カクテルにはそれぞれ意味があるらしく、今一緒に私の話を聞いていたバーメイドさんがおしゃれなメッセージをくれたのだ。
一緒に飲んでいる奈宮さんは、社長秘書を務める秘書課長。眼鏡をかけ綺麗に髪をまとめた、三十代後半のきりっとした女性だ。
公私共に頼りになるお姉さん的な存在なので、私はしばしば悩み相談をしている。今も私の望まないお見合い話の愚痴を冷静に聞いてくれていた。
カクテルのシャーベットをスプーンですくい、爽やかな甘さのそれを口へ運ぶ私に、彼女が要約して言う。
「紗雪ちゃんに白羽の矢が立っちゃったわけね」
「本っ当にその通りなんですよ。その言葉の由来って、生贄を求める神が、お目当ての少女の家の屋根に目印として白羽の矢を立てたってところから来てるんです。つまり、私は生贄なんですよ……!」
スプーンを握りしめて嘆く私を見て、奈宮さんは杖をつき口の端を引きつらせる。
「そんなにヤバい人なの? 町長の息子さんって」
「いえ、息子より町長が……。島全体が彼の支配下にあるような状態なので、帰りたくないんです」
生まれ育った遠い地の風景を、頭の中に蘇らせる。
一緒に飲んでいる奈宮さんは、社長秘書を務める秘書課長。眼鏡をかけ綺麗に髪をまとめた、三十代後半のきりっとした女性だ。
公私共に頼りになるお姉さん的な存在なので、私はしばしば悩み相談をしている。今も私の望まないお見合い話の愚痴を冷静に聞いてくれていた。
カクテルのシャーベットをスプーンですくい、爽やかな甘さのそれを口へ運ぶ私に、彼女が要約して言う。
「紗雪ちゃんに白羽の矢が立っちゃったわけね」
「本っ当にその通りなんですよ。その言葉の由来って、生贄を求める神が、お目当ての少女の家の屋根に目印として白羽の矢を立てたってところから来てるんです。つまり、私は生贄なんですよ……!」
スプーンを握りしめて嘆く私を見て、奈宮さんは杖をつき口の端を引きつらせる。
「そんなにヤバい人なの? 町長の息子さんって」
「いえ、息子より町長が……。島全体が彼の支配下にあるような状態なので、帰りたくないんです」
生まれ育った遠い地の風景を、頭の中に蘇らせる。



