ちびっこ息子と俺様社長パパは最愛ママを手放さない

 副社長って子供が好きなのかな。仕事人間というイメージだったからちょっと意外だ。子供と関わる姿を見たことがないせいかもしれないけれど。
 彼も人並みの家庭が理想なんだなとほっこりするも、情熱的な瞳がこちらに向けられ、無意識に背筋が伸びる。

「なんの考えもなしに妻になれと言っているわけじゃない。君も子供も、目一杯愛するつもりだ」

 一生彼に言われることはないだろうと思っていた言葉が放たれ、目を見開いた。
 副社長が、私を愛してくれるの? しかも、子供が欲しいということはそういう行為もするわけで……。夢見た展開すぎて正気を保っていられない!
 セクシーな彼との破廉恥な妄想が脳裏をよぎり、ぼっと火が点いたみたいに顔が熱くなった。心臓もバクバクし始めて、もう頭は回りそうにない。
 思考が限界突破してしまい、「無理ぃ~」と両手で顔を覆ってカウンターに突っ伏した。いつものシゴデキ秘書の仮面はすっかり剥がれているだろう私に、副社長はやや焦ったような調子で声をかける。

「おい、どれだけ飲んだ?」
「え~っと……これが三杯目?」
「四杯目です。ペースが速かったので、アルコールは控えめにしましたが」

 顔を伏せたままグラスを指差して答えるも、バーメイドさんが即座に訂正した。