ちびっこ息子と俺様社長パパは最愛ママを手放さない

「確かに、利害は一致しますよね。でも、私のほうの問題は本当に厄介なんですよ。万が一、浅霧家の皆さんにまでご迷惑をおかけすることになったら、仕事まで失いかねません」

 旧財閥家との結婚となれば、大きなニュースになるはず。たやすく町長の耳に入ってしまうだろうし、逆恨みして一族の不利益になるようなことをする可能性もなくはない。町長の黒い噂が本当だったらの話だけれど。
 万が一そうなったら、私は結婚どころか副社長の秘書ですらいられなくなるかもしれない。リスクが高すぎる。
 しかし、怖気づく私とは違い、彼はふっと鼻で笑う。

「そんなことに俺が屈するとでも? こういう時こそ浅霧家の力を使うんだよ。一族のあらゆる手を使えば、政治も経済も、なんなら警察も動かせる。ワンマン政治で小さな島を掌握した気になっている、お山の大将のような町長に勝てないわけがない」

 口元にだけ黒い笑みを浮かべる彼は、ぞくりとするほど凄艶だった。
 そうだ、浅霧家のほうが権力でいえばずっと上なのだ。あの町長も敵わないかもしれない。私はすごい人のそばに仕えているのだと、改めて実感した。