揺らがない自信を露わにする彼は、涼しげな表情で二杯目のカクテルを受け取って続ける。
「だから、『愛のない結婚をすることになります。私は娘さんを不幸にしたくはありません。あなたも同じでは?』と言って社長を説得した」
「なるほど。物は言いようですね」
「口のうまさでこの俺に勝てるやつはなかなかいない」
不敵に口角を上げるので、私も思わずくすっと笑いがこぼれた。確かに、副社長は誰でも論破してしまうし、言い負かされるところなんて見たことがない。
婚約事情の真相が明らかになり、ひとり頷く私。「これでもまだ疑うか?」と問いかけられ、首を横に振った。
「いえ、納得しました。わからないのは、いくら仕事で信頼関係が築けているからって、どうして私を……」
妻にしようとしてくれるのか、だ。
完璧な元婚約者ですら相手にされなかったのに、ごくごく一般庶民の、むしろ面倒な事情を抱えている私が選ばれるなんて絶対におかしい。
夫婦としてはうまくいかないかもしれないし、旧財閥の一族になる存在を勘で決めていいのだろうか。
難しい顔をし続ける私を、副社長は揺らがない瞳で見つめる。
「だから、『愛のない結婚をすることになります。私は娘さんを不幸にしたくはありません。あなたも同じでは?』と言って社長を説得した」
「なるほど。物は言いようですね」
「口のうまさでこの俺に勝てるやつはなかなかいない」
不敵に口角を上げるので、私も思わずくすっと笑いがこぼれた。確かに、副社長は誰でも論破してしまうし、言い負かされるところなんて見たことがない。
婚約事情の真相が明らかになり、ひとり頷く私。「これでもまだ疑うか?」と問いかけられ、首を横に振った。
「いえ、納得しました。わからないのは、いくら仕事で信頼関係が築けているからって、どうして私を……」
妻にしようとしてくれるのか、だ。
完璧な元婚約者ですら相手にされなかったのに、ごくごく一般庶民の、むしろ面倒な事情を抱えている私が選ばれるなんて絶対におかしい。
夫婦としてはうまくいかないかもしれないし、旧財閥の一族になる存在を勘で決めていいのだろうか。
難しい顔をし続ける私を、副社長は揺らがない瞳で見つめる。



