あれは他にもたくさん参加者がいる集いの帰りだったのか。睦社長がふたりにさせる時がたまにあるのなら、その目撃情報のせいで秘書課では婚約者のままという認識になっていたのかもしれない。
ただ、そのままふたりで帰ったのかどうか、彼に片想いしている身としては気になるところ。
「家まで送っていったんですか?」
「いや、タクシーに乗るところまで。たいして酔ってもなかったし、大人なんだからひとりで帰れるだろ、と」
「意外にも塩対応……」
「俺にその気がまったくないからな。好きな女ならもっと大切にするが」
さらっと口にされた〝好きな女〟というひと言にどきりとする。副社長に大切にされる人が心底羨ましい。
とりあえず元婚約者の彼女とは恋愛関係ではないらしいので、少しホッとしてしまった。
でも、そもそも破談になった理由はなんだったのだろう。この感じだと、副社長の方から断っていそうだけれど。
「どうして破談になったんです? 政略結婚だっていう噂は聞きましたが」
「そう。事業のためだけの結婚を親が目論んでいて、勝手に婚約者にされていた。でも俺も牧原と同じで、結婚はいずれしたいと思うが、相手が誰でもいいわけじゃない。結婚なんてものに頼らなくても、仕事は自分の力で掴める」
ただ、そのままふたりで帰ったのかどうか、彼に片想いしている身としては気になるところ。
「家まで送っていったんですか?」
「いや、タクシーに乗るところまで。たいして酔ってもなかったし、大人なんだからひとりで帰れるだろ、と」
「意外にも塩対応……」
「俺にその気がまったくないからな。好きな女ならもっと大切にするが」
さらっと口にされた〝好きな女〟というひと言にどきりとする。副社長に大切にされる人が心底羨ましい。
とりあえず元婚約者の彼女とは恋愛関係ではないらしいので、少しホッとしてしまった。
でも、そもそも破談になった理由はなんだったのだろう。この感じだと、副社長の方から断っていそうだけれど。
「どうして破談になったんです? 政略結婚だっていう噂は聞きましたが」
「そう。事業のためだけの結婚を親が目論んでいて、勝手に婚約者にされていた。でも俺も牧原と同じで、結婚はいずれしたいと思うが、相手が誰でもいいわけじゃない。結婚なんてものに頼らなくても、仕事は自分の力で掴める」



