ちびっこ息子と俺様社長パパは最愛ママを手放さない

　結婚を受け入れるしかないのかもしれない。そうなったら、言い方は悪いが町長は島民を支配しているくらいなのだから、私も絶対に島から出してもらえなくなるはず。
　これが、美しい監獄だと感じる理由なのだ。

「なるほどね。島にある昔ながらの空気感と、権力を持った政治家の親、確かに俺でも嫌になる」

　副社長は苦々しい表情を見せ、ナッツを摘まんで口に運んだ。
　彼にわかってもらえただけで、ほんの少し心が軽くなった。話を聞いてもらって、プライベートで一緒にお酒を飲めて、これで十分だなと思える。
　夕映えのようなピンク色のカクテルをひと口飲んだ時、しばし思案するように黙っていた彼が問いかける。

「牧原は、結婚自体する気がないのか？」
「いえ……結婚願望はありますよ。島以外の人とでしたら」

　もちろん好きな人と──副社長と、一緒になれたらどんなに幸せか。
　そんな願望を抱くだけでもおこがましくて、自嘲気味の笑みがこぼれた。決して叶いっこない、不毛な望みだから。

「じゃあ、俺でもいいんだな」
「ええ、そうですね……。……え？」

　流れでよく考えずに答えたものの、彼の発言がおかしいことに気付いて顔を上げた。