そしてあの時に抱いた憧れが、恋に変わるのを止めるのも無理だった。まさかの秘書になってしまったんだもの。
どうして私なんかが秘書に抜擢されたのか、今でも不思議で仕方ないけれど、神様が私にくれたご褒美なのかもしれない。
たとえ恋心が報われなくても、彼のそばにいるだけでやる気も幸せも満ちてくるのだから──。
私たちのやり取りをさりげなく静観していたバーメイドさんは、副社長が頼んだマティーニを手際よく作って差し出す。私には度数低めのベリーニという桃のカクテルを作ってくれた。
彼はオリーブが沈んだ透明なカクテルを口に運ぶ。
マティーニはかなり度数の高いお酒だと聞いた。アルコールにも強くてカッコいい……なんて思いつつ、とても絵になる姿に見惚れていると、ひと口含んだ彼が切り出す。
「じゃあ、さっそく聞かせてくれ。どうして監獄に入れられそうなのか」
冗談のようで冗談じゃない彼のひと言で、現実に引き戻された私は苦笑を漏らした。シェイカーを振る心地いい音を聞きながら、「実は……」と重い口を開く。
つい先ほどお見合い話について母から連絡があり、この話を呑んだら一生地元で暮らさなければならないと打ち明けると、副社長は納得した様子で軽く頷いた。
どうして私なんかが秘書に抜擢されたのか、今でも不思議で仕方ないけれど、神様が私にくれたご褒美なのかもしれない。
たとえ恋心が報われなくても、彼のそばにいるだけでやる気も幸せも満ちてくるのだから──。
私たちのやり取りをさりげなく静観していたバーメイドさんは、副社長が頼んだマティーニを手際よく作って差し出す。私には度数低めのベリーニという桃のカクテルを作ってくれた。
彼はオリーブが沈んだ透明なカクテルを口に運ぶ。
マティーニはかなり度数の高いお酒だと聞いた。アルコールにも強くてカッコいい……なんて思いつつ、とても絵になる姿に見惚れていると、ひと口含んだ彼が切り出す。
「じゃあ、さっそく聞かせてくれ。どうして監獄に入れられそうなのか」
冗談のようで冗談じゃない彼のひと言で、現実に引き戻された私は苦笑を漏らした。シェイカーを振る心地いい音を聞きながら、「実は……」と重い口を開く。
つい先ほどお見合い話について母から連絡があり、この話を呑んだら一生地元で暮らさなければならないと打ち明けると、副社長は納得した様子で軽く頷いた。



