ちびっこ息子と俺様社長パパは最愛ママを手放さない

「俺をいつも一番近くで見ていて、そんなに頼りない男に感じていたのか?」
「っ、違います、断じて!」

 即座にきっぱり否定すると、その勢いに副社長はやや目を見開く。

「副社長は決して責任の持てないことは言わないし、有言実行する行動力も、素早く大胆な決断力もあって、いつも尊敬しています。副社長についていけば間違いないと思えるくらい、私は心から信頼しています」

 お世辞でもなんでもなく、本当に感じていることを率直に告げた。
 口先だけではなく実力で成功させてきた華麗な仕事ぶりや、下っ端の社員の意見も大事にしてくれる包容力に私は惚れたのだから。
 副社長はふっと口角を上げ、王様さながらの魅惑的な笑みを浮かべる。

「その通りだ。どんな難しい案件もこなしてきた俺が、話を聞くだけ聞いてなにもしない腑抜けなわけないだろう」

 自信に満ちた言葉に、はっとさせられた。
 彼ならなんとかしてくれるのではないかという、圧倒的な強さと信頼感が、絶望の淵でへたり込んでいた私を奮い立たせてくれる。

「わかっているなら観念して座れ。君の問題をどうすれば解決できるか、一緒に考えてやる」

 副社長はさっきまで奈宮さんが座っていた隣の椅子に腰かけ、私のグラスが置かれたテーブルをとんとんと指で叩いた。