会場は雑居ビルの一室だった。簡素な受付と、パイプ椅子が並ぶ待合スペース。十数人の男子が、それぞれ緊張した顔でスマホをいじったり、ストレッチをしたりしている。
――思ったより、本気っぽい。
瞳は椅子に腰を下ろし、冷えたペットボトルを握りしめた。場違い感がじわじわと押し寄せてくる。
「藍原ヒトミさん」
スタッフに呼ばれ、立ち上がる。部屋の奥には、机を並べて座る審査員が三人。カメラも回っている。
「じゃあ、まずは自己紹介をお願いします」
瞳は一瞬だけ迷ったが、すぐに口を開いた。
「……藍原ヒトミ、十六歳です。趣味はスケボー。歌が好きです」
「では、歌と簡単なダンスをお願いします」
流れ始めた課題曲。瞳は深呼吸して声を出す。
喉が自然に開き、会場に響くのは中性的な澄んだ高音。力強さも秘めた響きに、審査員が顔を上げた。
そのままイントロに合わせ、軽くステップを踏む。
リズムゲームやスケボーで培った感覚が、勝手に体を動かす。ターン、ジャンプ。派手ではないが、音を掴んだ動き。
――……なんか、踊れてる。
最後にビートへ合わせて軽くスライドして締めると、審査員のひとりが思わずペンを止めていた。
「はい、ありがとうございます」
演技やアピールをする余裕なんてなかった。けれど、瞳の声と動きは、会場の空気を確かに変えていた。
その日の夕方。メールが届く。
《合格おめでとうございます。次のステップとして、グループ候補者合同練習にご参加ください》
画面を見つめ、瞳は小さく息を呑んだ。
――……嘘でしょ。
――思ったより、本気っぽい。
瞳は椅子に腰を下ろし、冷えたペットボトルを握りしめた。場違い感がじわじわと押し寄せてくる。
「藍原ヒトミさん」
スタッフに呼ばれ、立ち上がる。部屋の奥には、机を並べて座る審査員が三人。カメラも回っている。
「じゃあ、まずは自己紹介をお願いします」
瞳は一瞬だけ迷ったが、すぐに口を開いた。
「……藍原ヒトミ、十六歳です。趣味はスケボー。歌が好きです」
「では、歌と簡単なダンスをお願いします」
流れ始めた課題曲。瞳は深呼吸して声を出す。
喉が自然に開き、会場に響くのは中性的な澄んだ高音。力強さも秘めた響きに、審査員が顔を上げた。
そのままイントロに合わせ、軽くステップを踏む。
リズムゲームやスケボーで培った感覚が、勝手に体を動かす。ターン、ジャンプ。派手ではないが、音を掴んだ動き。
――……なんか、踊れてる。
最後にビートへ合わせて軽くスライドして締めると、審査員のひとりが思わずペンを止めていた。
「はい、ありがとうございます」
演技やアピールをする余裕なんてなかった。けれど、瞳の声と動きは、会場の空気を確かに変えていた。
その日の夕方。メールが届く。
《合格おめでとうございます。次のステップとして、グループ候補者合同練習にご参加ください》
画面を見つめ、瞳は小さく息を呑んだ。
――……嘘でしょ。



