俺が、私で、アイドルで - 秘密を抱いてステージへ

 照明が落ち、観客のざわめきがひときわ大きくなる。
 番組の目玉企画――新人グループによるスペシャルステージ。

 最初はECLIPSE。
 ビートの効いた曲に合わせて、鋭いダンスと迫力ある歌声が響く。
 篠崎 樹が視線を突き刺すように歌い、橘 隼人が派手なターンを決める。観客の歓声が弾け、会場の空気が熱を帯びていった。

「すげぇな……」ヒナタが思わず息を呑む。
「油断するな」アオトが短く答える。

 次はBluebell Boysの番だ。
 イントロが流れると、レイは心臓の鼓動を数えて呼吸を整えた。
 ――負けない。絶対に。

 ヒナタの明るい声、ユウキのラップ、アオトの安定感。
 そしてレイ。
 スポットライトを浴びて伸ばした声が、会場の奥まで届いていく。

 観客がどよめいた。
 ――透き通る。けど強い声。
 SNSに「Echolineの新人やばい」「レイの声鳥肌」などの投稿が飛び交うのが想像できた。

 パフォーマンスを終えると、拍手が二つのグループに割れて押し寄せた。
 熱気の中、ECLIPSEの樹がわずかに笑みを浮かべて近づく。

「いい歌だったよ。でも、その“声”――どこか不自然に感じるんだよな」
 耳元で囁くように言い、すぐに背を向けた。

「樹、やりすぎだろ」海斗が小声でたしなめる。
「別に。ただの感想だ」

 去っていく背中を見送りながら、レイは無意識に拳を握った。
 ――気づかれた? いや、まだ。
 けれど、額に冷たい汗が滲む。