俺が、私で、アイドルで - 秘密を抱いてステージへ

 舞台袖。幕の向こうからは、観客のざわめきと歓声が絶えず響いていた。
 Bluebell Boys の四人は列になって出番を待つ。

「はぁ……胃が痛い」
 ユウキが小声でつぶやく。ヒナタは緊張を隠そうと笑っているが、マイクを握る手が震えていた。

 その横を、先輩グループのメンバーが通り過ぎる。華やかな衣装に、余裕の笑み。
「新人くんたちか。楽しんでこいよ」
 軽く肩を叩かれ、レイは思わず背筋を伸ばした。

「……余裕だな」アオトが低く言う。
「俺たちも、やれる」レイは自分に言い聞かせるように答えた。

 ステージディレクターが声を張る。
「次、Bluebell Boys!」

 眩しいライトが、幕の隙間から差し込んでくる。

   ◇◇

 ステージ中央にスポットが落ち、司会者が明るい声を響かせた。

「さあ皆さん、お待たせしました! 次は、Echoline Entertainmentが送り出す期待の新人! まだデビュー前のフレッシュな顔ぶれです!」

 客席からどっと拍手と歓声が湧く。ペンライトが揺れ、舞台袖にもその熱気が押し寄せてきた。

「名前を覚えてください! この四人が、未来のスター候補! Bluebell Boys!」

 歓声がさらに大きくなる。

 レイの喉が乾いた。マイクを握る手に汗がにじむ。
 ――吐きそう。
 心臓の音が、周りにも聞こえてるんじゃないかと思うくらいにうるさい。

「行くぞ」
 アオトの低い声が背中を押す。

 ヒナタは大きく深呼吸して「やべぇ、テンション上がってきた!」と笑った。
 ユウキは黙って眼鏡を直し、前を向いている。

 スタッフの合図。ステージに足を踏み出す瞬間、レイの視界が真っ白に染まった。