俺が、私で、アイドルで - 秘密を抱いてステージへ

 夜のスタジオ。練習を終えた四人が、床に座り込んでペットボトルを開けた。鏡に映る自分たちの顔は、皆ぐったりとしている。

「はー、今日も地獄だわ」
 陽大が仰向けに転がって大きく息を吐く。
「でもさ、あれできたとき気持ちよくね? 俺、ダンスも歌も、めっちゃ楽しんでるんだけど!」

「楽しんでるのはいいけど、声裏返ってただろ」
 悠生が冷静に突っ込む。眼鏡の奥の視線が鋭い。

「うるせー! お前は真面目すぎなんだよ!」
「真面目だから形になるんだ。お前のは勢いだけ」

 二人が言い合いを始め、瞳は苦笑した。
 ――ほんと、犬と猫みたい。

「……おい」
 短く低い声で蒼が割って入る。
「まだ始まったばかりだ。余計な口喧嘩で時間を無駄にするな」

 その一言で、スタジオに沈黙が落ちた。
 蒼はタオルで汗を拭きながら、真っ直ぐに瞳を見やる。
「藍原。お前、今日のステップは悪くなかった」

「……ありがとう」
 思わず小声になる。心臓が少しだけ早く打った。

「よっしゃー! じゃあ明日も頑張ろうぜ!」
 陽大が無理やり場を明るくするように笑い、悠生は肩をすくめる。

 瞳はペットボトルの水を口に含んだ。冷たさが喉を通る。
 ――まだぎこちない。でも、少しずつ。
 ――この四人で、チームになっていくんだ。