フレンの言葉にアリシアは青ざめ、フレデリックは顔を盛大に顰める。

「あんたが死ぬってことは、俺が死ぬってことだよな」

 フレデリックが静かに吐き捨てると、アリシアが悲痛な顔でフレンとフレデリックを見つめた。

(問題を解決しないと、フレン様もフレデリック様も、死んでしまう)

 フレンは未来の夫、フレデリックは現婚約者で同一人物だ。フレンが未来へ戻って死んだとしたら、フレデリックもいつか突然死んでしまうのだ。フレンは未来の自分ととても仲が良さそうで、愛し合っているだろうことがわかる。自分も、フレデリックと婚約者から夫婦として日々を重ねていくうちに、愛を育んでいくのかもしれない。それが、突然絶たれてしまうのだ。

(どうしよう、そんなの嫌だわ)

 ドレスをぎゅ、と掴んでアリシアは俯く。二人と過ごしたさまざまな日々が、とても尊いもののように思えてならない。それほどまで、アリシアにとってフレデリックとフレンの存在は大きなものになっていた。

「問題、と言うのは?」
「わからない。詳しいことは言われなかった。だが、きっとメリッサのことじゃないかと思う。他に思い当たる節もないしな」

 フレンの言葉に、フレデリックも頷く。


「アリシア、近いうちにメリッサと話をしてくれないか?もし不安であれば俺もフレンも同席する。メリッサがなぜあんな行動に出たのか、きちんと聞く必要がある。今のアリシアとメリッサなら、もしかしたらまだ関係性を修復できるかもしれない」

 フレデリックがそう言うと、俯いていたアリシアはハッとして顔を上げる。そして、頷いた。

「わ、かりました。話し合います。ちゃんと話し合って、問題を解決できるように……」

(解決できなかったらどうなるの?フレン様も、フレデリック様も、死んでしまう?)

「アリシア?」

 呆然として二人を見つめるアリシアを、フレンとフレデリックは心配そうに見つめ、静かに立った。そしてアリシアを挟むようにして両隣に座る。

「アリシア、大丈夫だよアリシア」
「そんなに思い詰めなくてもいい。大丈夫だ、アリシアを一人置いていなくなったりしない」

 二人とも、アリシアの肩に手をそっと添えて、顔を覗き込む。優しく、宥めるように言うと、アリシアは両目から涙をこぼして肩を震わせた。

「お二人が、お二人がいなくなってしまうなんて……そんなの、嫌です、絶対に嫌……!」

 ポロポロと涙を流してそう言うアリシアを、フレンとフレデリックは両側からそっと抱きしめた。