まぁ、そんな調子の私なので保健室の前まできて緊張してしまって、なかなかノックすることができませんでした。

中で病人が寝ているかもしれないと思うと、なおさら先生に余計な手間をかけさせるのではないかと気をもむばかりでした。

意を決してノックをするまでに5分はかかったと思います。
ドアを開けて「失礼します」と中に入ると、40代前半の女性保険医の先生が丸椅子をクルリと回転させてこちらを見ました。

ひとつにまとめられた栗色の髪がふわりと揺れて、その美しさに思わず棒立ちになり心臓がドキドキしてきました。

「なにかあった?」
「いえ、ちょっと聞きたいことがあって来ました」