「——ねえ、ぶっちゃっけこの中にいると思う? アカネのバイトをチクった犯人? ちょっと、想像出来ないんだけど」

 アカネちゃんがいなくなった隙に、そう言ってミドリちゃんが顔を寄せた。

「私も同感。絶対、他から漏れたんだよ。入店する時に見られたとか、お客さんに保護者がいたとか」

 私もアオイちゃんの意見に賛成! アオイちゃんの隣で、うんうんと相づちを打っておく。

「やっぱ、校則って破ると面倒なことになっちゃうんだね……」

 そして、そもそも論のモモカちゃん。ふむふむ、確かにそうだ。


「ふうー……」

 ため息をつきつつ、アカネちゃんが席に戻ってきました。コーラが入ったグラスを、ストローでカラカラと回しています。

「モモカが言ってたの聞こえた。私がダメなんだよね、校則破ってバイトとかしちゃったんだから。とりあえず、こんな雰囲気にしちゃってごめん……」

 アカネちゃんに聞こえないつもりで言った、モモカちゃん。気まずそうに下を向いちゃいました。

「でもね、なんでバレちゃったのか、そこだけはずっと引っかかってるの。もしかしたら……私、嫌われてるんじゃないかって。だからチクられたんじゃないかって、思っちゃったりして……」

 いつも明るいアカネちゃんが、みるみる涙目になっていく。こんなアカネちゃん、今まで見たことない……

「そっ、そんなことあるわけないじゃん! 私たちの中に、そんな子いないよ! 投書送られてショックなのは分かるけど、私たちは信じてよ」

 アカネちゃんの隣に移動したモモカちゃんは、そう言ってアカネちゃんの肩を抱いた。

 偉いな、モモカちゃん——

 私もそうやって、上手に言葉に出来たら……肩を抱いてあげられたら……

「モモカの言うとおりだよ。それに、そんなふうに疑われたら私たちだってショックだよ? ——きっと、何か他の事でバレたんだよ。謹慎中はアカネん家遊びに行くから、寂しがることないって」

「そうそう。仲間を疑うような事は、もうやめようよ。スミレもそう思うよね?」

 ミドリちゃんもアオイちゃんも立派な意見を言える。

 アオイちゃんに対して、「うん」としか言えなかった自分が情けなかった。