カラーズ

 テーブルに映る人影に気付いて顔を上げると、モモカちゃんが立っていた。

「はいはい、ここ座って」

 ミドリちゃんが端によって、モモカちゃんを真ん中に座らせる。

「ミドリには少しずつ返事してるけど、アオイとスミレには殆ど返事できてなくてごめん。——本当に、ごめんなさい」

 モモカちゃんは、私たちに深く頭を下げた。

「モモカが謝ることないよ」

「ホント、モモカちゃんは何も悪くない」

 私たちは口々に、そう言った。


「一つ疑問なんだけど、どうして問い詰められたとき、はっきり否定しなかったの? あのままだと、モモカは怪しまれたままだったよ」

 アオイちゃんが聞いた。それは、私も思っていたことだ。

「それ、私が代わりに答えるね。モモカが中学生の時、仲間はずれにされたって話あったじゃない? 始まりは、モモカの一つの小さな嘘が原因だったらしいの。それはそれでちゃんと謝ったのに、あることないこと言われて、いくら否定しても『それも嘘だ! こいつの言う事は全部嘘だ!』って言われたらしくて。——そこから始まったんだって、仲間はずれが」

 そう話すミドリちゃんの横で、モモカちゃんの目にどんどん涙が溜まっていく。

「教室で平原に疑われた時、モモカは私とアカネにビラ配りのこと言っちゃってたじゃない? だから、モモカの中では100パーセント弁明できる立場じゃないと思ったみたいで。——そうだよね?」

 ミドリちゃんの言葉に、コクリと頷くモモカちゃん。

「あと、みんなでファミレスに集まった時は、モモカが黙ってバイトしてた話が最初に出ちゃったでしょ? きっと、中学生の時の事がトラウマになっちゃってたんだよ。ひとつの嘘がキッカケで、何言っても嘘つき扱いされるんじゃないかって。そして、仲間はずれにされるんじゃないかって……」

 ミドリちゃんの目にも、涙が浮かんでた。

「そっか……辛かったね、気付いてあげられなくてごめん……」

 そう言った、アオイちゃんも涙目になっている。

 私は口を開けば涙が溢れそうで、何も言えなかった。


「そうそう、モモカ。アカネの話は聞いてるの?」

 アオイちゃんが目尻を拭いながら聞く。

「ミドリから大体のことは……どうしてこうなっちゃったのか、私には少し心当たりはあるんだけど……」

「こ……心当たりって?」

「アオイ、そこから先はアカネの家で聞こう。——今から行くよ、アカネん家に!!」

 ミドリちゃんはそう言うと、みんなの返事を待たずに席を立った。