「遅いねモモカ」
アカネちゃんはいつものように、コーラが入ったグラスをストローでカラカラと回してる。
「あっ、モモカちゃんだ!」
いつも奥に座っている私の席からは店の入り口が見える。普段とは違う、私服のモモカちゃんが入ってきた。
「ごめんね、遅くなっちゃって。あ、あと連絡しなかったのも……」
いつもの元気が無い、モモカちゃん——
「なにやってたんだよ、本当に」
ミドリちゃんがモモカちゃんの脇腹を、グーの手でグリグリってしてる。ホントにちょっと怒ってたのと、安心したのが混ざってるんだと思う。
「来てくれて良かったよ。もう、大丈夫?」
アオイちゃんが言う。私も隣で相づちを打った。
「来てすぐで悪いけど、質問させてね。モモカって夜の時間帯に返信遅いときあるじゃん? 『長風呂してた』とか『寝ちゃってた』とかって時。で、モモカには悪いんだけど、平原に聞いたんだ。『モモカに会った、バイトの初日っていつだったか憶えてる?』って」
ミドリちゃんは、来たばかりのモモカちゃんに質問をした。モモカちゃんの視線が、少し揺らいだように見える。ミドリちゃんは構わず、話を続けた。
「平原は、『バイト初日だったから、もちろん憶えてる』って。で、その日のモモカとのLINE辿ったんだけどさ、『寝ちゃってた』って返ってきてるの。——街で平原を見かけた日だよね? どうして嘘ついたの?」
ミドリちゃんは、モモカちゃんの顔をじっと見た。私たちも知らなかった事でとても驚いてる。
モモカちゃんは何も無いテーブルの一点をじっと見つめてる。
みんな黙ってモモカちゃんの返事を待つ。
グラスの氷が溶けて、カランと鳴った。
「——実はね、週に2日ほど、親戚のおばさんのお店でお手伝いしてるの。平日はそこまで忙しく無いから、慣れて無くても出来るからって言わ――」
「それってバイトだよね!?」
話し始めたモモカちゃんの話を、アカネちゃんが遮った。
「私に、校則は守った方がいいみたいなこと言ったよね!? それで私たちには黙って自分だけバイトしてたの!? ちょっと信じられないんだけど!!」
アカネちゃん怒ってる。アオイちゃんは「話の続きを聞こう」と言って、アカネちゃんの肩に手を置いた。
「私もちょっとショックだよ……モモカがバイトしてたって事じゃなく、私たちに黙ってたってことが。——なんで、言ってくれなかったの?」
怒っているというより、寂しそうな表情で話すミドリちゃん。
「ごっ……ごめんなさい……」
モモカちゃんは泣き出すと、そこから何も話せなくなった。
「もう今日は解散でどう? いくら待っても、モモカ話さないし。悪いけど私の中じゃ、平原さんと私をチクったのはモモカになっちゃってるから」
アカネちゃんが鞄にスマホを入れて、帰る準備を始めた。
「——モモカ、もう今日は話してくれないの? どう?」
ミドリちゃんが、下を向いたままのモモカちゃんを覗き込んで聞く。
「仕方ない、今日は解散しよ。モモカも落ち着いたら、みんなにちゃんと話して。——それでいい?」
アオイちゃんのその言葉に、モモカちゃんはコクリと頭を下げた。
アカネちゃんはいつものように、コーラが入ったグラスをストローでカラカラと回してる。
「あっ、モモカちゃんだ!」
いつも奥に座っている私の席からは店の入り口が見える。普段とは違う、私服のモモカちゃんが入ってきた。
「ごめんね、遅くなっちゃって。あ、あと連絡しなかったのも……」
いつもの元気が無い、モモカちゃん——
「なにやってたんだよ、本当に」
ミドリちゃんがモモカちゃんの脇腹を、グーの手でグリグリってしてる。ホントにちょっと怒ってたのと、安心したのが混ざってるんだと思う。
「来てくれて良かったよ。もう、大丈夫?」
アオイちゃんが言う。私も隣で相づちを打った。
「来てすぐで悪いけど、質問させてね。モモカって夜の時間帯に返信遅いときあるじゃん? 『長風呂してた』とか『寝ちゃってた』とかって時。で、モモカには悪いんだけど、平原に聞いたんだ。『モモカに会った、バイトの初日っていつだったか憶えてる?』って」
ミドリちゃんは、来たばかりのモモカちゃんに質問をした。モモカちゃんの視線が、少し揺らいだように見える。ミドリちゃんは構わず、話を続けた。
「平原は、『バイト初日だったから、もちろん憶えてる』って。で、その日のモモカとのLINE辿ったんだけどさ、『寝ちゃってた』って返ってきてるの。——街で平原を見かけた日だよね? どうして嘘ついたの?」
ミドリちゃんは、モモカちゃんの顔をじっと見た。私たちも知らなかった事でとても驚いてる。
モモカちゃんは何も無いテーブルの一点をじっと見つめてる。
みんな黙ってモモカちゃんの返事を待つ。
グラスの氷が溶けて、カランと鳴った。
「——実はね、週に2日ほど、親戚のおばさんのお店でお手伝いしてるの。平日はそこまで忙しく無いから、慣れて無くても出来るからって言わ――」
「それってバイトだよね!?」
話し始めたモモカちゃんの話を、アカネちゃんが遮った。
「私に、校則は守った方がいいみたいなこと言ったよね!? それで私たちには黙って自分だけバイトしてたの!? ちょっと信じられないんだけど!!」
アカネちゃん怒ってる。アオイちゃんは「話の続きを聞こう」と言って、アカネちゃんの肩に手を置いた。
「私もちょっとショックだよ……モモカがバイトしてたって事じゃなく、私たちに黙ってたってことが。——なんで、言ってくれなかったの?」
怒っているというより、寂しそうな表情で話すミドリちゃん。
「ごっ……ごめんなさい……」
モモカちゃんは泣き出すと、そこから何も話せなくなった。
「もう今日は解散でどう? いくら待っても、モモカ話さないし。悪いけど私の中じゃ、平原さんと私をチクったのはモモカになっちゃってるから」
アカネちゃんが鞄にスマホを入れて、帰る準備を始めた。
「——モモカ、もう今日は話してくれないの? どう?」
ミドリちゃんが、下を向いたままのモモカちゃんを覗き込んで聞く。
「仕方ない、今日は解散しよ。モモカも落ち着いたら、みんなにちゃんと話して。——それでいい?」
アオイちゃんのその言葉に、モモカちゃんはコクリと頭を下げた。



