いつか、桜の季節に 出逢えたら

防波堤の上を、二人で歩く。

「……俺は、あなたのころころ変わる表情とか、何かあった時に困ったように笑うのとか、考え事してる時に意識がどっか行くのとか、右に顔を傾けて教えるのとか、照れたら髪触るのとか、全部、かわいいと思ってます」

「……ありがとう」


「何か食ってる時も、かわいい。どんどん食べさせたくなる」

「……お手柔らかに」


「壁とか、関係なしに踏み込んでくるのとか」

「……兄と、仲良くなりたかったからね」


「ゲーム好きなところ。毎日、楽しかった」

「……私もだよ」


「あと、大人かと思えば、子どもっぽいところ。しっかりしてるようで、変なところで抜けているところとか」

「……あまり成長していないということだろうか(笑)」


「勉強、教えてくれて、ありがとう」

「……どういたしまして」


「俺は、これから、同じ大学に行って、同じ大学じゃなかったとしても一緒に住んで、あなたに近付く男を撃退して(笑)、ゆくゆくは父さんを説得して、認めてもらおうと思っていました。なのに、なんでいなくなるんだよ……」

「……ごめんね」

夕日が沈んでいく。
二人に残された時間が、静かに失われていく。


「紫苑、今までちゃんと言わなかったけど、私も紫苑のことが好きだよ。初めて会った時は無愛想だなと思ったけど、仲良くなったら普通に笑うし、思ったことが顔に出ちゃうところとか、実は優しいところとか、好きだなって思ったよ。面倒くさがりなのに、いつも私のわがままに付き合ってくれたよね。毎日一緒にいられて、本当に楽しかったよ。ありがとう」


帰りの電車の中。
隣りに座っているのに、お互いに触れることはせず、言葉も交わさないけれど、確かに、優しい時間が流れていた。

このまま、時間が止まってしまえばいいのにーーと思った。