その夜、私は、紫苑の部屋のドアをノックした。
「紫苑くん、お話があります。部屋に入ってもいいかな?」
「……どうぞ」
紫苑は、目も合わせてくれない。
理由も告げずに逃げたのだから、無理もない。
あれから、ゲームも勉強も、なおざりになってしまっているから仕方がないよね。
「……失礼します」
私は、紫苑の部屋の、床に正座する。
紫苑も、テーブルを挟んで私の正面に座る。
「……で、何?」
私は、静かに深呼吸をして、ゆっくりと話し始めた。
「信じられないかもしれないけど、これから私が言うことは、全部、本当の話です」
それから、私は、全てを話した。
私は、絵梨花の体に入っている、別の人間の魂であること。
自分が、八年後の2025年からやってきた人間であること。
絵梨花の体の寿命は3月24日までであり、私の魂が抜けたら、絵梨花の完全な死ーーとなること。
「……何、冗談いってんの?」
「……冗談じゃ、ありません」
「俺のこと何とも思ってないなら、そう言えばいいだけなんだけど。なんでそんな嘘吐くわけ?」
「……嘘じゃ、ありません」
いきなりそんなこと言われても、信じられないよね。
でも、これが現実なんだよ。
「だって、どう考えてもおかしいだろ……お前が、あと12日でいなくなるとか。未来から来たって言うなら、何か証明できるものは?」
「この12日以内に証明できるようなことは……ごめん、思いつかない。だけど、本当のことだよ。信じるも信じないも自由だけど、本当に、3月24日に絵梨花は死んでしまうの」
紫苑は、どうしても信じられないという表情で、考え込んでいる。
「……本当は、12月25日にあの川で、絵梨花は死んでたんだよ。この体は、私の魂が入っているから動いているに過ぎない。でも期限があるから、もうすぐ死んでしまうの。だから私は、絵梨花のやり残したことを片付けてから、消えようと思います」
「……中のお前は、どうなるの」
「2025年に私の体が残っていたら、その先も生きてるんじゃないかな」
こればかりは、自分ではどうしようもないから、もう開き直って笑うしかない。
「それが本当だとして、なんで俺に言うんだよ……」
紫苑の声が、震えている。
「……だって、紫苑くんは恩人だから。私の過去も未来も、変えたくないって思わせてくれたから。未来の世界で後悔ばかりしていた私に、この人生も悪くなかったなって思わせてくれたから。毎日、楽しかった。好きって言ってくれて、嬉しかった。気まずい状態で、絵梨花のまま死にたくなかった。紫苑くんには、本当のことを知っていて欲しかったの」
涙がこぼれそうだけど、必死に堪えて笑った。
「……ごめんね、急にこんなこと言って。やっぱり、信じられないよね。本当に、ごめん。ただ、伝えたかっただけだから」
黙って下を向いている紫苑を背に、私は、絵梨花の部屋に戻った。
「……ごめんね」
あんなこと、言わなければ良かったのかな。
何も言わないまま、消えてしまえば良かったのかな。
でも、やっぱり、自分の気持ちは伝えておきたかった。
私のエゴだとわかっているけど、紫苑にだけは、私の存在を知っていて欲しかった。
「紫苑くん、お話があります。部屋に入ってもいいかな?」
「……どうぞ」
紫苑は、目も合わせてくれない。
理由も告げずに逃げたのだから、無理もない。
あれから、ゲームも勉強も、なおざりになってしまっているから仕方がないよね。
「……失礼します」
私は、紫苑の部屋の、床に正座する。
紫苑も、テーブルを挟んで私の正面に座る。
「……で、何?」
私は、静かに深呼吸をして、ゆっくりと話し始めた。
「信じられないかもしれないけど、これから私が言うことは、全部、本当の話です」
それから、私は、全てを話した。
私は、絵梨花の体に入っている、別の人間の魂であること。
自分が、八年後の2025年からやってきた人間であること。
絵梨花の体の寿命は3月24日までであり、私の魂が抜けたら、絵梨花の完全な死ーーとなること。
「……何、冗談いってんの?」
「……冗談じゃ、ありません」
「俺のこと何とも思ってないなら、そう言えばいいだけなんだけど。なんでそんな嘘吐くわけ?」
「……嘘じゃ、ありません」
いきなりそんなこと言われても、信じられないよね。
でも、これが現実なんだよ。
「だって、どう考えてもおかしいだろ……お前が、あと12日でいなくなるとか。未来から来たって言うなら、何か証明できるものは?」
「この12日以内に証明できるようなことは……ごめん、思いつかない。だけど、本当のことだよ。信じるも信じないも自由だけど、本当に、3月24日に絵梨花は死んでしまうの」
紫苑は、どうしても信じられないという表情で、考え込んでいる。
「……本当は、12月25日にあの川で、絵梨花は死んでたんだよ。この体は、私の魂が入っているから動いているに過ぎない。でも期限があるから、もうすぐ死んでしまうの。だから私は、絵梨花のやり残したことを片付けてから、消えようと思います」
「……中のお前は、どうなるの」
「2025年に私の体が残っていたら、その先も生きてるんじゃないかな」
こればかりは、自分ではどうしようもないから、もう開き直って笑うしかない。
「それが本当だとして、なんで俺に言うんだよ……」
紫苑の声が、震えている。
「……だって、紫苑くんは恩人だから。私の過去も未来も、変えたくないって思わせてくれたから。未来の世界で後悔ばかりしていた私に、この人生も悪くなかったなって思わせてくれたから。毎日、楽しかった。好きって言ってくれて、嬉しかった。気まずい状態で、絵梨花のまま死にたくなかった。紫苑くんには、本当のことを知っていて欲しかったの」
涙がこぼれそうだけど、必死に堪えて笑った。
「……ごめんね、急にこんなこと言って。やっぱり、信じられないよね。本当に、ごめん。ただ、伝えたかっただけだから」
黙って下を向いている紫苑を背に、私は、絵梨花の部屋に戻った。
「……ごめんね」
あんなこと、言わなければ良かったのかな。
何も言わないまま、消えてしまえば良かったのかな。
でも、やっぱり、自分の気持ちは伝えておきたかった。
私のエゴだとわかっているけど、紫苑にだけは、私の存在を知っていて欲しかった。
