いつか、桜の季節に 出逢えたら

朝の天気予報で、放課後に雨が降るって、知っていたのに。

傘を忘れた。
しかも、二人とも。

「お前が持って来てると思ってたんだけど」

「普通に忘れましたぁ……っていうか、私だけ持ってきたって、濡れるでしょ、この降り方じゃ」

雨が降るっていうのに、傘を持って行く選択肢がないほど面倒くさがりなのか、この人は。

「一緒に入ればいいと思ったんだけどな」

そりゃあ、傘一本でよければ、荷物が少なくて済むだろうけど。

そんなことより。
雨が止む気配がなく、駅から出ることができない。

駅のコンビニで傘を買おうと思ったのに、売り切れていて途方にくれる。


「これは、もう濡れるの覚悟で帰った方が、早いかもしれないね」

雨宿りができそうな軒下を見つけては、避難しながら走った。

すでに濡れてしまっているので、あまり意味はないかもしれないけれど。
途中で寄ったコンビニで、一本だけ余っていた傘を見つけて、買った。

「ほら、濡れるから」

引き寄せられて紫苑に肩がぶつかると、胸の鼓動が速くなった。


え? どうしちゃったんだ、私。
なんかーーすごく恥ずかしいんだけど!?

意外と力強いんだな、とか。
ちゃんと男の子の体格してるんだな、とか。
なんでそんなこと考えてるのか、自分でも意味がわからない。


「……紫苑くん、肩、濡れてるよ?」

私が濡れないように、気を遣ってくれているの?


「いいんだよ、俺は」

まっすぐ前を向いているから表情はよくわからないけど、優しい声。


「傘持って来なかったの、わざとだから」

「……ん? 何か言った?」

急に傘に落ちてきた大粒の雨音で、紫苑の言葉が、よく聞き取れなかった。

「何も」