いつか、桜の季節に 出逢えたら

最近、雨宮莉々から執拗にLIMEが来る。

紫苑との仲を取り持ってほしいーーそればかり。
自分でアタックしてるじゃん。
この前、紫苑には勧めてみたよ。
でも、興味なさそうだったんだよ。
私が何をすれば、納得してくれるのだろう。

ずっとスルーしてきたけれど、そろそろ真正面から向き合うべきかもしれない。

放課後、莉々と二人きりで会ってみることにした。
紫苑が委員会活動の日なので、ちょうどいい。
待ち合わせ場所ーー莉々の教室へ向かう。

「莉々ちゃん、お待たせ」

「……絵梨花、莉々のお願い、聞いてくれないの?」

ーー早速、それか。
想定していたとはいえ、あまりに想定通りで、苦笑いするしかない。

「だって、莉々ちゃん、自分から行けてるでしょ? この前、紫苑くんに莉々ちゃんのこと、勧めてみたよ? でも、そういう気分じゃないみたいなこと言ってたんだよ。もうこれ以上、私には無理だよ」

「……絵梨花、莉々との約束、破ってるじゃん」

「だから、協力はできないって言ってるでしょ?」


「なんで髪切ったり、スカート上げたりしてるのよ?」

「……え? だって、髪は重いし、動きにくいし」


「莉々は、絵梨花にはあのままでいてほしかった! 紫苑くんと一緒に暮らしてるってだけでもズルいのに、絵梨花が女の子として見られたら困るじゃん! 莉々、絵梨花のこと嫌いになるよ? もう莉々と友達じゃいられなくなるよ?」

ーーあぁ、これか。
女の子らしいものが好きな絵梨花が、自分の身なりを地味にしていた理由。
美容師さんが言っていた、友人というのは、莉々だったのだ。

絵梨花は、莉々ちゃんに絶交されるのも怖かったのか。
こんな友情、なくても困らないのに。
絵梨花は本当に、自己肯定感が低い子だったのだな。

「莉々ちゃん、私は妹なの。そういう関係にはならないよ?」

「嘘! 勉強会の時、二人だけ帰ったじゃん! 紫苑くん、絵梨花にだけ他の子には見せない顔をするの。ズルいよ!」

「だって、それは……私が妹だから……」


「絵梨花も紫苑くんのこと好きなんでしょ?」

莉々の言葉に、思わず動揺してしまった。
ーー違うよ。
もし、そうだったとしても、私はそのうち消えてしまうんだから。

「違うよ。絶交するならしてもいいよ。髪を切ったのと制服のことは、知らなかったから。でも、知っていても、こうしていたと思う。ごめんね、莉々ちゃん。何か困ったら話は聞くから、あとは自分で頑張ってね」

「絵梨花、待って! ごめん……」

莉々に手を振り、私は一人で教室を後にした。