いつか、桜の季節に 出逢えたら

「青木先生は、まだ三年目ですよね? 今は、二年生の担任ですけど、来年は三年生を持ったりはしませんよね? あなた、大丈夫なんですか?」

三者面談の時に、生徒の保護者から言われたことだ。

「担任を持つかどうかは、まだ決まっていません。しかし、持つ可能性はあると言われています。まだ経験不足かもしれませんが、学年主任も生徒指導もおりますので、ご安心していただければと……」

「あなたにとっては教師生活の通過点かもしれませんけど、うちの子にとっては一生に一度の大事な時期なんです。だから、来年はベテランの先生にお願いしたいんです!」

ーー言葉がなかった。
確かに、経験不足ではあるから。

大学生の頃、家庭教師のバイトをしていたけれど、大学名があればそれで信頼してもらえていた。
なのに、教師になった途端、経験値を問われることになるとは。
こんなの、どうしようもないのにーー。


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「青木先生、今度、会合があるから、よろしくね」

こっちはこっちで、年若い女というだけで、接待要員にされる。
変なことをされるわけではないけれど、下っ端ということで、とにかく気を遣う。

仕事の上ではデメリットな年齢が、こういう場ではメリットとされるのが、どうにも釈然としない。

それに、雑用も押し付けられる。
配布物作成、印刷物の準備、その他諸々。

自分の授業の準備、生徒からの相談事、自分の時間が削られていく。


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「ゆかりちゃんって、彼氏いないの〜?」

放課後の教室で、提出物の整理をしている時に、生徒が声をかけてきた。

「先生、でしょ? 残念ながら、いませんよ」

「えー、ゆかりちゃんかわいいのに。ウチの彼氏はねぇ〜」

年が近いからか、生徒からは、友達のように扱われる。
別に悪いことではないのだけれど。

経験を求められたり、年若さを求められたり、本来あるべき姿があるはずなのに。
自分がどうあるべきか、わからなくなることがあるーー。