いつか、桜の季節に 出逢えたら

「紫苑くん、携帯ゲーム機、ありがとね。やっぱり、自分のデータでやり込まないとね」

私は、自分用にゲームソフトを買った。
そして、新作が出る度に買い替えるという紫苑から、もう使わなくなった型落ちのゲーム機を譲ってもらったのだ。
これで、心置きなく遊べるってものよ。


「……で、なんでお前が俺の部屋に入り浸ってんの?」

「いいじゃん。兄と遊びたいんだよ。ね、これ手伝ってよ」

紫苑のベッドに寝転がりながら、足をバタバタする。
絵梨花のための「仲良し妹作戦」を実行中でもある。

ーーどうだ、この自由さ! いかにも妹らしいだろう?
絵梨花の望む妹像がどんなものかはわからないけど、私が独断で考えた妹イメージで行くから、文句言わないでね。

「別にいいけどさ。そのバタバタはやめろ」

紫苑はPCデスクの椅子に座ったまま、呆れたように言った。


「兄と遊べるのが嬉しいんだよ」

紫苑の呆れ顔を流しつつ、ゲームに興じる。
ゲームが楽しいっていうのは、本当だし。

紫苑は協力プレイでのフォローが上手なんだよね。
かゆいところに手が届くというか、私の動きを理解した上で動いてくれるから、とてもやりやすい。

「別に、いいけどさ……」

紫苑から、やや気まずそうな声が聞こえる。


「ん? 何か言った?」

ーー今、いいところ。もうすぐ倒せる。


「お前、なんでかわからんけど、成績良かったじゃん?」

「んー、そりゃあ……まぁ」

ーーよし、クリア。


「俺に、勉強……教えてくれない?」

「え? えぇ!?」

驚いてベッドから飛び起きた。


「今年は受験生じゃん? そろそろ本当に進路を決める時期っていうか……今のままじゃ、どこにも行けないからさ。特に数学がヤバイ……」

あの紫苑が私に頼み事をしてくるなんて。
良好な人間関係が築けてきたのでは!?


「もちろん! 私でよければ教えるよ!」

妹として兄のお役に立てるなら、お安い御用だよ。