「セーブデータ、見せてね」
セーブデータは、三つまで作ることができる。
そのうち、二つのデータがあった。
「上のが一番レベル高いから、これがメイン?」
ロードすると、最強の装備にレアな装飾品が揃っていた。
全武器、しっかり最高レベルまで作ってある。
こうなるためには、相当の時間と労力を費やしているはず。
「もう一つ、データがあるけど、これは?」
「メインデータは男キャラでソロ。女キャラの装備も欲しいから、二つ目のは野良マルチとか、気楽に遊ぶためのサブ」
なるほど。男キャラはタイムアタックやソロ攻略用、女キャラは協力プレイ用というわけか。
そこまでやり込む人は、そう多くない。
「ガチのガチですねぇ、兄貴」
「いや、それほどでも」
あの紫苑が、なんだか嬉しそうだ。
「この空いてる三つ目のデータ、使っていい? 後で消してもいいから」
「別にいいけど」
「じゃ、ちょっと借りてくね」
紫苑に借りた携帯ゲーム機を、自分の部屋で始める。
まずは、キャラクターをカスタマイズして、新しくセーブデータを作る。
これには、プレイヤーの趣味嗜好が反映されると思う。
それは、理想像だったり、自分自身だったり。
私は、自分に似せてキャラを作る派。
ーーしかし、訳がわからない。
やったことがないはずなのに、何の説明もなくここまで進められるなんて。
やっぱり、やったことがあるんだよ。
「紫苑くん、ストーリーここまで進んだよ」
得意顔で、ゲーム機を差し出す。
「このキャラ、お前そっくりじゃん」
「私は、自己投影タイプなの。自分が戦ってるみたいで楽しいでしょ?」
「ていうか、お前、この武器使えんの? 素人には難しいはずなんだけど」
紫苑が、私のデータを見るなり驚いている。
複雑な操作の武器なのだが、指が覚えているかのように、難なく動かすことができる。
「……不思議だよね」
絵梨花本人が過去にやっていたのか、急に出てきた別人格の私がどこかでやっていたのかーーどこで?
そんなこと、あり得るの?
「紫苑くん、ちょっと一緒にやってみない?」
「じゃ、これね」
敵の動きまで覚えていて、攻撃タイミングには指が勝手に動いてしまう。
「お前、普通に上手いじゃん。どういうことだよ」
「わからないよ……」
もう一つ、わかったことがある。
紫苑が上手すぎる。
こちらの動きがわかっているかのように。
「ちょっと、紫苑くん、上手すぎない?」
「俺くらいになると、人に合わせんのも楽勝なんだよ」
いつもの無表情とは全然違う、得意気に笑う紫苑を見て、私も嬉しくなった。
ーーまぁいいか。
絵梨花がゲームしていたかどうかなんて。
そのうち、わかることもあるだろう。
一つだけ不安があるとすればーー絵梨花本人が戻ってきた時に、私がどうなってしまうのか。
消えたくないなーーそう思った。
セーブデータは、三つまで作ることができる。
そのうち、二つのデータがあった。
「上のが一番レベル高いから、これがメイン?」
ロードすると、最強の装備にレアな装飾品が揃っていた。
全武器、しっかり最高レベルまで作ってある。
こうなるためには、相当の時間と労力を費やしているはず。
「もう一つ、データがあるけど、これは?」
「メインデータは男キャラでソロ。女キャラの装備も欲しいから、二つ目のは野良マルチとか、気楽に遊ぶためのサブ」
なるほど。男キャラはタイムアタックやソロ攻略用、女キャラは協力プレイ用というわけか。
そこまでやり込む人は、そう多くない。
「ガチのガチですねぇ、兄貴」
「いや、それほどでも」
あの紫苑が、なんだか嬉しそうだ。
「この空いてる三つ目のデータ、使っていい? 後で消してもいいから」
「別にいいけど」
「じゃ、ちょっと借りてくね」
紫苑に借りた携帯ゲーム機を、自分の部屋で始める。
まずは、キャラクターをカスタマイズして、新しくセーブデータを作る。
これには、プレイヤーの趣味嗜好が反映されると思う。
それは、理想像だったり、自分自身だったり。
私は、自分に似せてキャラを作る派。
ーーしかし、訳がわからない。
やったことがないはずなのに、何の説明もなくここまで進められるなんて。
やっぱり、やったことがあるんだよ。
「紫苑くん、ストーリーここまで進んだよ」
得意顔で、ゲーム機を差し出す。
「このキャラ、お前そっくりじゃん」
「私は、自己投影タイプなの。自分が戦ってるみたいで楽しいでしょ?」
「ていうか、お前、この武器使えんの? 素人には難しいはずなんだけど」
紫苑が、私のデータを見るなり驚いている。
複雑な操作の武器なのだが、指が覚えているかのように、難なく動かすことができる。
「……不思議だよね」
絵梨花本人が過去にやっていたのか、急に出てきた別人格の私がどこかでやっていたのかーーどこで?
そんなこと、あり得るの?
「紫苑くん、ちょっと一緒にやってみない?」
「じゃ、これね」
敵の動きまで覚えていて、攻撃タイミングには指が勝手に動いてしまう。
「お前、普通に上手いじゃん。どういうことだよ」
「わからないよ……」
もう一つ、わかったことがある。
紫苑が上手すぎる。
こちらの動きがわかっているかのように。
「ちょっと、紫苑くん、上手すぎない?」
「俺くらいになると、人に合わせんのも楽勝なんだよ」
いつもの無表情とは全然違う、得意気に笑う紫苑を見て、私も嬉しくなった。
ーーまぁいいか。
絵梨花がゲームしていたかどうかなんて。
そのうち、わかることもあるだろう。
一つだけ不安があるとすればーー絵梨花本人が戻ってきた時に、私がどうなってしまうのか。
消えたくないなーーそう思った。
