いつか、桜の季節に 出逢えたら

お正月が終わっても、新学期までまだ五日も残っている。

冬休みの課題はもうとっくに終わっているから、特にやることがない。
ということは、記憶を取り戻す作業に専念するしかない。

スマホの中は、見尽くした。
だとするともう、例の川に行くしかないじゃない。

というわけで。

「紫苑くん、連れて行って欲しいところがあるの」

紫苑の部屋のドアをノックする。

「お願い、お願い、お願い〜!」

コンコンコンコン……出てくるまでノックする。

「うるさいな。お前は何なんだよ、いつもいつも……」

ヘッドホンを外しながら、紫苑が顔を出した。

「何なんだって、妹ですけど? ごめん、私が助けられたという川まで、連れて行ってくれないかな。何か思い出せるかもしれないから」

「……今、取り込み中なんだけど」

ーーうわぁ、心の底から面倒くさそう。
無愛想どころか、もはや仏頂面と言ってもいいほどの不満顔。

申し訳ない……けど、あなただけが頼りなのです。

「それ、いつ終わる? 終わるの待ってるから、お願い。もうすぐ学校が始まるから、早く思い出したいんだよ」

手を合わせて、何度もお願いのポーズを取る。

私の粘りに、紫苑は諦めたようにため息を吐き、

「……じゃあ、あと15分な」

と言って自室に戻り、15分後に再び出てきてくれた。


「……で、どこだって?」

「確か、犬の散歩の看板がある、ベンチが並んだ辺りだと言われたよ。お母さんが、紫苑くんに聞いたらわかるって」

「……あー、あそこ……」

すぐに思い付けるということは、有名な場所なのだろうか。