僕の愛しい泥棒娘

「何が悪い話じゃないのよ。レッドにはユミ
アさんがいるの知ってるでしょう」

「でも彼女は平民だし孤児院の出身だし公爵
家の嫁は無理じゃないか」

「だから僕は平民になると言っているんので
すよ。父上がこんなに考えの狭い方だとは思
いませんでしたよ。ご自分は男爵家の娘を嫁
にもらうためにさっさと王太子の座を降りて
王位継承権まで放棄したくせに、僕にはユミ
アを諦めて好きでもない王女と結婚しろとい
うんですか?」

「そうよ。自分の借りを息子に無理やり返さ
せるなんて、最低の父親ね。それもユミアさ
んに直接会ってなんて言ったのよ」

「う~ん、何だったかなあ。忘れちゃった」

「あらそう、ユミアさんは“第二王女との婚姻
の話があるから諦めてくれ“と公爵様に言われ
たと言っていたわよ」

「父上、僕がユミアと結婚できなければ一生
あなたを恨みますよ。この家にも帰って来ま
せんからね」

そこにアウスレッドの侍従がやって来てアウ
スレッドに耳打ちした。

「なんだって、すぐに行く。ありがとう」

そう言うとアウスレッドは、小さなバッグを
もって出て行こうとした。

「レッド、どこに行くのよ」

と母親が焦って聞いてきた。

「父上が台無しにしたユミアとの絆を取り戻
しに行くんですよ。では失礼します」