僕の愛しい泥棒娘

「実は先日公爵様がいらしてお話をされてい
きました。今、アウスレッド様には第二王女
との婚姻が打診されているのだとおっしゃっ
ていました。王家はどうしてもアウスレッド
様を手放したくないようで王女と結婚させれ
ば、アウスレッド様を取り込めると思ってい
るようだが、私はその結婚を望んでいるのだ
とおっしゃっていました。だから私には諦め
て欲しいと…」

途中まで聞くとメマリーヌ様は憤怒の形相で
立ち上がり

「あのくそ公爵、何を言っているの。
ユミア心配しないで私がぎゃふんと
言わせてやるわ」

と言ってプンプンとして帰って行かれた。

壮絶な夫婦げんかになるのだろうかそれとも
公爵が一人責められてしまうのか?メアリー
ヌ様に今でもぞっこんな公爵様の痛々しい様
子が想像できてしまう。

ああ、あんなこと言わなければよかった。

どうせこの後船に乗ってまずは隣国に行くつ
もりなのだから、黙って消えるつもりが思い
がけなくメアリーヌ様がいらしてすっかり時
間を食ってしまった。

サリーヌにも手紙を書いた。後を託していく
事に申し訳なさが募るけれど工房の方は責任
者とアズナール商会がきちっと運営していっ
てくれるはずだ、ユミアの数々のこの国での
発明の特許の商品登録もすべてアズナール
家の商会にまかせる、つもりだと手紙に
書いた。