僕の愛しい泥棒娘

アウスレッドの纏う匂いは、今でもユミアの
大好物だ。

見た目は細く見えるのだが、しっかりと筋肉
がついた男らしい体躯に、顔も呆れるほど美
しく背も高い。神様はアウスレッドに与えす
ぎだと思う。

そして、ユミアを全霊で愛してくれているそ
んなアウスレッドと別れることができるのか
ユミアは自信がなかった。

でもこの国に居ればきっとアウスレッドは平
民になってユミアの側に居ようとするだろう
そんな事をさせる訳にはいかない。

でもユミアが貴族になって公爵夫人になるの
は絶対に無理だ。貴族は好きではない。

公爵家の人々はユミアに優しいが、大多数の
貴族は平民を下に見ていて、人間だとも思っ
ていない貴族もいるのではないかとユミアは
思っている。

貴族だと言うだけで偉ぶる態度も許せない。

そんな貴族にいくらアウスレッドと結婚する
為だと言っても、なりたくはない。

それに公爵夫人にいつかなれば社交界にも
出なければならないし、夜会やお茶会などの
意味が解らない集まりで人の噂話や悪口を
聞かなければならない。

そんな事になればユミアの心はきっと死んで
しまうだろう。

ユミアは孤児で平民でそれでもがんばって店
を持ちお金を稼いでいる一人の女としてユミ
アらしく生きていきたいのだ。

アウスレッドの人生と今はただ交じりあって
いるが、永久に並走できるわけではないと自
分でもわかっているのだ。