僕の愛しい泥棒娘

ぼくがユミアを部屋に連れて行こうとすると
妹が”兄上、ユミアさんを独り占めするのは
狡い“と言って頬を膨らませて拗ねていた。

ユリアは僕の恋人なんだが、今では家族皆の
友人になっている。

怪しからん。早く僕の婚約者と言う立場を作
ってしまわなければと焦るアウスレッドだっ
た。

部屋に入って侍女が紅茶を入れてくれたので
ソファーに座って二人で紅茶を飲みながら…
実際は緊張してそれどころではなかったが、
思い切ってユミアの前に跪いて

「ユミア、僕の大切な人、君を愛している。
どうか僕の花嫁になって一生僕の側にいて
くれませんか」

ユミアの両手を握り締め用意していた指輪を
取り出してユミアの指に嵌め様としたが、
ユミアは首を振って手を振りほどいた。
そして涙を流して

「レッド、私はあなたと結婚できるような女
ではないです。平民で孤児院育ちで泥棒で、
あなたとご家族とこんな風に親しくさせて
頂いているだけでも、恐れ多いのに結婚なん
てできません」

「ユミア、君が望んでくれれば男爵や伯爵の
養女になってから嫁いでくることもできるん
だ。母上も賛成してくれている。家は母上が
うんと言えばそれでOKなんだよ。何も心配
することはないよ」

「いいえ、私はそんな無理を通して嫁にもら
ってもらうような女じゃないんです」

「何を言ってるの。ユミアはたった一人で
孤児院も立て直して、今では孤児達や貧困層
の子供達に希望を与えている“神の手の使い”
じゃないか。誰がそこまでやれるんだ。
ユミアだからだよ。店も成功してるし沢山の
特許もとっているし才女で商才のある素晴ら
しい女性じゃないか。僕が物足りないのかな
あ?」