僕の愛しい泥棒娘

その時にはユミアはまだ鍵の空いていたドレ
ス部屋の窓からいつものように木に飛び移っ
て塀から外に飛び降りていた。

その時1駒の馬が駆け寄って来て、"ユミア!"
と叫んで手を差し出した。

アウスレッドだった。

アウスレッドはユミアを馬に引っ張り上げて
最速で駆けて行った。

もう大丈夫だろうと言うところまで来ると、
ユミアは袋に入れた帳簿やらなにやら全部ア
ウスレッドに渡した

「さあ、これでワイナリー公爵の一味を一網
打尽にしてきて」

「ありがとう。ユミア。でも約束は守らなか
っただろう。もう少しで捕まる所だった。
肝が冷えたよ」

「机の引き出しの2重底に隠してあった。
でも、最初に探した所にあったから、そんな
に時間は掛からなかったわ。公爵が部屋に来
たのが誤算だったのよ。でも、ドレス部屋の
鍵は開いたままだった。学習しない人達ね」

そう言ってケラケラと笑うユミアに、思わず
アウスレッドは口付けた。

「もうこんな所で何やってるの」

そう言うとひらりと馬から飛び降りて、後ろ
手に手を振りながら行ってしまった。

アウスレッドは馬の手綱を引いて方向転換さ
せると公爵邸に取って返した。

宰相たちが突入しようと構えていた。
アウスレッドは宰相に裏帳簿やダミアン商会
との覚書やもろもろの契約書を渡した。

「やってくれたんだな。まさか女なのか?
塀から侍女の服を着た物が飛び降りてきたの
にはびっくりしたぞ」

「宰相、潜り込ませるのに侍女に変装させた
んです。家の侍従は公爵邸の騎士に変装させ
て潜入しています」