僕の愛しい泥棒娘

「それはすごいですね。叔父様のアズナール
男爵ですよね」

「うん。それでね。明日ワイナリー家でお茶
会があるんだ。午後2時ごろからだと思う。
多分誓約書にサインした貴族家が集まるはず
なんだ。ワイナリー公爵達男性陣は別室で謀
議をすると思うんだけど僕達は、そこに乗り
込むつもりなんだ。もちろん騎士団も連れて
行く指揮は宰相が取る予定なんだけど、その
時公爵の書斎に忍び込んで裏帳簿と覚書や
契約書なんかもあったら盗って来て欲しいん
だ。それがあれば文句なくワイナリー公爵家
を終わりにする事ができる。これが最後だ。
お願いできるかな」

「わかったわ、昼間っていうのが初めてだけ
ど、どうやって侵入すればいいかなあ」

「それについては考えがある。臨時の手伝い
が何名か雇われているから、その手伝いに成
りすましてくれれば邸内には、問題なく入れ
る。制服も用意する。君だと分からないよう
に変装してほしい。そして大事な事を一つ約
束してほしいんだ。公爵の書斎の隠し金庫に
裏帳簿などが無かったらそれ以上は探さない
で、すぐに戻ってくるんだ。
ひょっとしたら置き場所を変えたかもしれな
い。その可能性の方が大きいと思うんだ。
だから決して無理をしないで欲しい。これだ
けは約束して!」

「わかりました。でも、変装したらまたきっ
とレッドさんは分からないと思うわ。ふふ」

「そう言うと思ったよ。だからこれを用意
したんだ、さっき買ってきた。余り良い物
ではないけどこれを髪につけていて」