僕の愛しい泥棒娘

ユミアは話を聞くと

「ええっ、あんなぼろ家に王妃様を?
本気ですか?」

「うん、一番あり得ない所にいてもらうのが
安全なのだと思う。外は変えられないが、
中は少しでも居心地のいいように秘密裏に改
装しようと思っているのだ。勝手に申し訳な
いが近くにいてくれるのがユミアさんなら安
心だし店からも裏には行けるだろう?それも
都合がいいのだが、どうだろうか、協力して
もらえないだろうか?」

と珍しく父親がしっかりと説明してユミアに
許可をもらおうとしているのには驚いた。

アウスレッドは自分が話すことになると思っ
ていたのだが、ユミアの隣に腰掛けて”無理
しないで嫌なら断ってもいいんだ“と言って
やることができた。

誓約書についてもユミアには話してあるので
ワイナリー家の陰謀についても、こちらの見
解についてはユミアも理解はしている。

「分かりました。実は今の家と裏の空家と
つなげてカフェコーナーも作るので、その
工事に入るつもりだったのですが、止めた
方がいいですね?」

「いや、つなげるならそのほうが警護がし易
いし、店からの出入りも分から無い様に出来
るからこちらとしては助かる。ただ工事はこ
ちらで手を回してやるので、どうしたいかを
まず教えてもらいたい。もちろん費用もこち
らで出す」

毅然として話を進める父親に唖然としてしま
う。

今まで母親にデレデレの顏しか見たことが無
かったのだ。

この男本当に侮れない。我が父親ながらさす
が筆頭公爵いざという時は頼りになる。