僕の愛しい泥棒娘

ユミアはそんな計画に夢中になっていた。
“シャウルー“をもう少し広げることができれ
ばクッキーも焼いて店に置けるし、カフェコ
ーナーも作れる。

そうすればクッキーだけでなく生クリームを
使った日持ちのしないスイーツも出せる。

王都にあるカフェは美味しくておしゃれな内
装で素敵なのだが、ほとんどが貴族相手のカ
フェなので一つ一つの値段が高いのだ。到底
平民には手が出ない。

ユミアは平民がちょっとした息抜きに、自分
へのご褒美に少し奮発すれば食べられるそん
なスイーツを提供したいと思っている。

だから“シャウルー”では平民感覚の価格設定
になっているのだ。

それも、ユミアが夜に貴族の家に忍び込んで
宝石のついでに要らなくなったであろう夫人
のドレスを盗んでいるから、布物に関しては
安く設定できているのだ。

アウスレッドと約束したのでもう夜の仕事は
しないと決めたが、布物の仕入れ先を考えな
ければならない。

後の物はそんなに利益を乗せていないが、結
構人気でお店は繁盛している為薄利多売の結
果少しづつお金も貯めていけている。

ただしお金を貯めていけるのはユミアの給料
分としてだけだ。

ミリアやケイト、そしてサリーヌには充分な
給料を渡しているが、オーナーとしてのユミ
アの取り分はすべて店の内部留保になって
いる。

ユミアの生活費もまた夜の仕事で賄っている
のだ。だから、その分がなくなるとまたこれ
も問題だと、軽々しくアウスレッドに約束し
てしまった事が悔やまれる。