30分ほどするとユミアが平然とした顔で
帰ってきた時には、思わずユミアを抱きしめ
てしまった。

ユミアはアウスレッドの突然の抱擁にドキ
ドキして硬直していた。

「あっ、ごめん。予定時間を過ぎていたから
何か不足の事態があったのではないかと心配
になってしまったんだ。無事でよかった」

そう優しく耳元で囁かれてユミアは真っ赤に
なってアウスレッドの顔が見られない。

肝の据わった泥棒なのにその反応が初心
すぎてアウスレッドも耳を赤く染めている。

「とにかくこれを確認して下さい」

そう言うとユミアはテイアラの箱と書き写
した誓約書を袋から取り出した。

そして携帯用の明かりをつけてアウスレッド
は、テイアラを確認して間違いないと言った
が、問題は誓約書の方だ。

「昨日は気が付かなかったのですが、巻紙を
すべて開けてみると、上の方に“我らは
ガラワリア・ワイナリー公爵閣下とその嫡男
ボラリス・ワイナリー殿に忠誠を誓う“と
言う文言が書いてあったのです」

アウスレッドは、ユミアが書き写してきた
誓約書を見て、これは大きな問題になる
だろうと目を見張った。

書かれている名前には4公爵家の名前はない
がかなり力を持つ侯爵や伯爵の名前や大きな
商会を動かす男爵家の名前が書かれて
いたのだ。