僕の愛しい泥棒娘

支度をして偽のテイアラの入った箱と巻紙と
鉛筆と携帯用の灯りを袋に入れてユミアは
店の裏から空き家を通って身軽に
走っていった

昨日と同じ大木の洞の中にズボンとブーツを
隠して軽い手作りの履物をはき黒い毛糸の
帽子で髪を隠した。

そうして公爵邸まで走って行って、木に
ロープを巻き付けて塀に昇って木を伝って
ベランダに飛び移り、やはり開いている窓
から室内に入った。

そして勝手知ったる公爵邸に忍び込んだ。

公爵の個人的な書斎は公爵の部屋の隣に
ある。執務室は1階にあるのだが、書斎は
本当に大事な物や公爵のお気に入りの絵画
などを収蔵してあるのだ。隠し金庫もそんな
絵画の裏にある。

前世のアメリカや日本のような金庫ではなく
ただ頑丈な鍵がつけてあるだけなのだ。

鍵の開錠はユミアには子供だましの様な物で
いつも10秒もかからずに開けられる。

まずテイアラの箱を交換して、誓約書を
取り出して騒ぎが始まるのを机の下に入って
待つ事10分ほどで、裏門が騒がしくなった

ユミアは机の下で携帯の明かりを頼りに、
誓約書に署名している人物の名前を
書き写していった。

そしてすべて終えてきちんと元通りにしまって
鍵もかけて書斎をあとにしようとしたら、
廊下が騒がしくなっている。

ユミアは急いで部屋の中にあるドアから公爵
と夫人の部屋を通って入ってきた小部屋に
たどり着いた。