僕の愛しい泥棒娘

ユミアはさっさと引き返してこの屋敷から、
出なければならないと思った。

廊下の様子を見ながらさっと部屋から出た。
鍵をかけている余裕はなかった。ランプや書
類は元通りしまったが、鍵まではかけられな
かった。

ユミアは侍女の一人の後ろからついて行った
らキッチンに行きつき、お嬢様の部屋に食事
を持っていくのを手伝う事になった。

２階にあるお嬢様の部屋にお盆にのせた食事
を２人でもっていった。随分量が多いと
思ったら、二人分だった。

お嬢様のお部屋に行くと、ここからも例の匂
いが漂ってきた。そして喘ぎ声も…

その最中に入っていいのかと思っていたら、
侍女がノックをしてお食事をお持ちしました
と言ったら、しばらくしてガウンだけ羽織っ
た格好で男が顔を出した。

そして食事を乗せたお盆を受け取っていく。

二つの大きなお盆を受け取ったら言葉も発せ
ずにドアを閉めた。

ユミアはその男の顔を見て驚いた。なぜなら
宰相の補佐官の一人だったからだ。

たぶん間違いないと思うが、向こうはもちろ
ん気が付いていない。

ユミアはしっかりと変装しているからだ。

アウスレッドでも気づかないユミアの変装は
完璧なのだ。

ユミアはその仕事を終えると、正門の横の使
用人の出入り口から出て行った。

丁度通いの使用人の何人かが帰る時間だった
らしく何人かの使用人が門を通っていたので
紛れる事ができた。