僕の愛しい泥棒娘

「はい、それはよく分かっています。でも
お互いに信用できない夫婦のもとでよそよそ
しい家族ごっこでも、その方が良いんですか
それが自分でも判断尽きません」

「そんなにアウスレッドが信用できないのね
。ユミアは何が一番許せないの?」

「一番最初から私を騙そうとしたことです。
怪我をしている事も何も知らなかった自分も
情けない妻ですが、何食わぬ顔をして1カ月
以上子供達や私と過ごせたレッドを信用でき
ないんです」

「そうね。そう言われると私も返す言葉がな
いわ。でもねアウスレッドは今もユミアしか
見えていないのよ。それだけは信じて彼の憔
悴は見ていられないと言って、宰相も国王も
何とかしてやってくれって言って来るのよ。
すっかりやせてしまって食事もきちんと取れ
ていないみたいなの。それに筆頭補佐官は止
めるって言い出すし、王宮には行かないで
1日ユミアを探して歩き回っているのよ」

「ウッ」とユミアは絶句した。痩せてしまっ
たと言うアウスレッドが気になる。

馬であちこち駆けまわるアウスレッドを想像
して、胸が痛くなってくる。

「大事な案件があるらしいのに、最初っから
平民になってアズナール商会をユミアとやっ
た方がよかったなんて言う始末なのよ。ホン
トに馬鹿な息子。ここをアウスレッドに教え
てもいいかしら、いくら馬鹿な子でももう見
ていられないのよ」