僕の愛しい泥棒娘

アウスレッドは、母からの急ぎの手紙で、ユミ
アがすべて知ってしまった事を知った。

すべて終わってから話すつもりだったのだが、
なかなか思うようにサテラン伯爵の証拠が掴
めないのだ。

最初に令嬢に接近して情報を得ようとしたの
が間違いだった。そのせいでこんな酷い噂が
尾ひれに背びれまで付けて流れているのだ。

母が言った通り社交界の貴族の噂話を侮って
はいけなかった。白が１週間の間に黒になっ
ているなんて普通の事だと母は言ったのだ。

特に今は社交シーズンだ。噂は矢のように
駆け巡っている。

今はどういう事になっているのか、確認する
のも恐ろしい。伯爵が公爵家に責任を取れと
怒鳴り込んできたらしいが、母も父もそんな
男に騙されるはずがない。

それは安心していいのだが、双子の育児に忙
しいユミアの耳には入らないと高をくくって
いたのが間違いだった。

ユミアが外に出なくてもよそから人は訪ねて
来るのだ。ユミアに家を訪ねてくるような貴
族の親しい友人はいないはずだったが、“シ
ャウルー”２号店の店長は男爵家の令嬢だっ
た。

アウスレッドは母親からの手紙を受け取った
もののすぐに動きが取れなくて、結局こんな
時間になってしまったが、ユミアに全て話し
て叱られよう。

そう思って帰ってきたが家の空気はなぜだか
いつもと違っていた。

侍女や小間使いは玄関まで迎えに出てきたが
アウスレッドと目を合わせようとしない。