僕の愛しい泥棒娘

「レッド、レッド、しっかりして」

アウスレッドの体を抱えて起こすと、体がす
ごく熱い事に気付いた。熱が出ているようだ

いくら春とは言え夜中はまだ冷え込む夜通し
こんな所に座り込んでいたのならきっと風邪
を引いたのだろう。

ユミアは“シャウルー“のドアをどんどん叩い
て2階にいるミリアを起こした。

戸を開けてくれてアウスレッドを裏の家まで
連れて行くのを手伝ってくれた。

サリーヌが起きていたので、医者を呼んでく
れるように頼んだ。

ユミアはアウスレッドを一階の空き部屋に寝
かせた。熱があるので服を脱がせていいか分
からなかったので医者を待つ事にした。

毛布や布団やらを集めてきたが、アウスレッ
ドを2階に運ぶのは無理そうだ。

その間もアウスレッドは何度も何度もうわ言
でユミアの名前を呼んだ。

昨夜家に帰ろうと店の近くまで来た時に店の
前にアウスレッドが佇んでいるのを見つけて
孤児院へ行ったのだが、アウスレッドは、
あれからもずっと店の前でユミアの帰りを待
ち続けていたのだろう。

なんて馬鹿な事をしているのかと、ユミアは
腹立たしくて泣けてきた。

こんな平民の泥棒だった女の為に、隣国まで
追いかけて来たり、夜通し家の前で帰りを待
っていて熱を出すなんて、そんな価値が自分
にあるとは思えない。

アウスレッドは額に汗をかきながら苦しそう
に眉間にしわを寄せている。

長い睫毛が頬に影を落として半開きになった
口から苦しそうに息を吐きだしている。