僕の愛しい泥棒娘

そういうと第二王女様は悠々と上品に背筋を
ピンと伸ばした優雅な姿勢で、歩き去ってい
った。

ユミアはもう何も返す言葉が見つからなかっ
た。そうなのだ、アウスレッドをこの国から
筆頭補佐官ひいては宰相という地位からユミ
アが勝手に連れ去ってはいけない人なのだ。

分かっていたのに、追いかけて来てくれてユ
ミアに愛を呟くアウスレッドに、絆されてし
まったのだ。

ユミアはダミアサール家の席には帰れなかっ
た。

自分なんかが、アウスレッドにどうあがいて
も見合うはずがないのは明白な事実なのだ。
第二王女は淡々と声を荒げるでもなく事実を
ユミアに告げてくれただけなのだ。

ユミアはごった返す王宮の広場を抜けて王都
の自分のいるべき場所に向けて、黙々と歩い
ていた。

履きなれないヒールの靴で足も痛くなってき
た。たった半日もヒールの靴を履いていられ
ない平民の娘がこんな服を着て公爵家の席に
座っているなんて滑稽だっただろう。

王女はどんな思いでいたのだろうか。

自分らしく居られる場所に帰ろうとユミアは
サリーヌが待つ“シャウルー”を目指して靴を
脱いで走っていた。

明日この服も靴も宝石も公爵家に届けて、そ
れでお終いにしよう。第二王女殿下にあそこ
まで言わせてしまって申し訳が立たない。