そんな乃愛となるべく関わりたくないと思うのは当然のことだろう。


「それでは、明日からよろしくお願いします！失礼しました」


職員室から、ミルクティー色に染めたふんわりと巻かれている長い髪を揺らして、女の子が出てきた。

彼女は丁寧にお辞儀をすると、微笑んだまま私の方に歩いてきて横を通り過ぎていった。

彼女が横を通っただけで、花のような甘い匂いが鼻を掠めた。

小動物のような小柄な体、ぱっちりな二重、ほんのりとピンク色に染まった頬は愛らしく、かなりの美少女で目を惹く。


「きゃ…っ！」

「大丈夫ですか？」


荷物を運んでいた女子生徒が足を滑らせたのか転倒し、その拍子に持っていたプリントが舞うという大惨事に。

それをいち早く助けに入ったのが、彼女だった。

何度もお礼を伝えている女子生徒に、彼女は天使のような微笑みを浮かべていた。

あそこにだけ光が差しているかのように彼女の笑顔はとても眩しくて、周りの人を惹きつける。

プリントを拾ってもらった女子生徒も、ほうっと彼女の笑顔に見惚れていた。


…ああ、あの子がそうなのか、と私だけが理解する。

綾瀬美羽(あやせみう)。

絵に描いたような聖女でこの世界のみんなから愛されるヒロイン。

それが、彼女なんだと…。