氷王子なんてこっちから願い下げよ。



…と思っていたのに、何この状況は…。

隣には怯えた表情で両目いっぱいに涙を浮かべて口と手足を縛られて座っている光莉の姿。

同じように私も口と手足を縛られていて、薄暗い室内でここがどこかなのかすらよくわからない。

見えるのは高いところにある窓から差し込む光と、何が入っているのかよくわからないダンボールがあちこちに積まれていて、古いパイプ椅子が無造作に二つ置かれているだけの倉庫のような場所。

ズキズキと痛む頭で、必死に何が起こったかを思い出す。

時は遡ること放課後…。




風邪なんて転生前もあまり引いたことがなく、乃愛の体になって一週間も寝込んでいたせいか、階段を上がることすら今日はしんどい。

昨日まで熱が続いていた病み上がりの体だし、今日は安静にしておくべきだったかもしれない。

早く帰って早めに寝よう。なんなら、乃愛の父親の秘書に頼んで、車で迎えを呼ぼうかな…。

そんなことを考えながら靴箱に向かっていると、通り過ぎた空き教室から人の声のようなものが聞こえてきた。

不思議に思ってそっと中を覗くと、光莉と女子生徒三人が向かい合って何かを話していた。

こんな人気のない薄暗い空き教室で、一体何をしてるんだろう…?


「宙先輩の妹だからって調子に乗ってんじゃないよ!こっちが下手に出てやってんのに、その態度ムカつくんだよ!」


突然ドンっと一人の女子生徒が光莉を突き飛ばし、その拍子に光莉は危なっかしくよろけていた。