「今度は何を企んでるんだ?いきなり一週間もなんのアプローチもしてこないなんておまえらしくないだろ。…まさかとは思うが、光莉に手を出してるわけではないよな?」

「…はあ?」


好きでもない相手に愛想を振りまくことなんてするわけないし、光莉とはまだ関わりすらないのだからこっちから関わろうともする予定はない。

だから宙にも放っておいてほしいのに。

大人しくしてたら大人しくしてたで、“おまえらしくない”なんて、こいつ実は乃愛に気でもあったんじゃないの?

この前までは悲しくて辛かったけど、乃愛であることに慣れてきたからかだんだんとムカついてきた。どいつもこいつも…。


「…離してください。別に、何も企んでなんてないし、あなたの妹にだって興味ありません。それに風邪を引いてこの一週間寝込んでいたんです。病み上がりなので人と話すことすら辛いんですけど…」

「はっ、相手にされないからと次は俺に興味のないか弱い女のフリを始めたのか?そんなことしても無駄…」

「いい加減にしてくれる?」


バッと腕を掴まれていた手を乱暴に振り払う。


「いつまでも私があんたを好きでいるなんて勘違いしないで。もう私はあんたのこと一ミリも好きだなんて思ってないし、興味もないから。二度と近づくこともしないから安心してください」


にこっと微笑みながら、ぽかーんと間抜けな顔をして驚いている宙を置いてその横をスタスタと通り過ぎる。

はースッキリした。

妹以外に興味のないあんな男に片想いをする設定なんて、作らなければよかった。