ピュアで純情なヒロインは誰からも愛される天性の聖女で、物語の鍵となる四人の男子ヒーローからも溺愛されていき、最終的には一人の男子主人公と結ばれ幸せに学園生活を過ごすといったハッピーエンド。

悪役にいじめられながらも、四人の男子ヒーローに助けられヒロインは強く成長していく。


「はーおなかすいた」


完成した小説のことはひとまず忘れて、今は食事だ。

ここ数日間、栄養ドリンクやゼリーしか食べていなかったから、お腹がペコペコで今にも倒れそう。

とは言え、冷蔵庫の中はすっからかんだし、ひとまずは食料調達に出かけなくては。


お財布とスマホと家の鍵を順番にズボンのポケットに突っ込み、家を出る。

夜九時を過ぎているのに、外は様々な人で溢れていてボサボサな格好で出てきたことを少し後悔する。

街を歩いている人たちはこんなにもキラキラとしているのに、私は家に閉じこもって小説ばかり書いて…それだけじゃとても生きていけないからバイトをしながらなんとか毎日を生きている。

私は小説の世界みたいな青春を送ったことはなく、平凡な学校生活を送り平凡な毎日を過ごしていた。

高校生の頃に趣味で書いていた小説をコンテストに応募したところたまたまバズって、なんとなくこの道に進みたいなと決めてから三年。

適当に入った大学にはすっかり行っていなく、仲のいい友達も彼氏もできずにつまらない毎日をただ送っていた。

きっとこの先の人生もぼーっとしているうちになんとなく流れてなんとなく終わっていくんだろうな…。

まあ、別にそれでもいいんだけどね。

現実は小説の世界みたいにうまくいくことばかりじゃないし、どうせ今更何かを変えられるわけでもないんだから。