悪女の私がヒロインみたいに溺愛されてます!

だって物語に悪役はつきものでしょ?

ヒロインを輝かせるために、闇である悪女が必要なの。

だから私は“宝槻乃愛”を作った。

それなのに、ある日突然自分で生み出したキャラに転生してこんな目に遭うなんて…。

本当、最悪。

やってないことの濡れ衣まで着せられて、私がどんなに平穏な日常を願って改心したところで、この世界には私を信じてくれる人なんて誰もいないんだ…。

乃愛も、こんな気持ちで一人で孤独に耐えてたの?


「私、最低だ…」


溢れ出る涙のせいで前がよく見えていなかったからか、廊下の角を曲がろうとしたところで人がいることに気づかず思いっきり肩をぶつけてしまう。


「い…っ」


よろけながら顔を上げると、驚いた顔をしたサラサラの黒髪男子と目が合った。

その後ろには、ツインテールをしている美少女の姿も。

彼はこの世界の一人目のヒーロー、夏目宙(なつめそら)

一つ年上の宙は、整いすぎている容姿に加えて成績優秀、スポーツ万能のなんでもできちゃう完璧男子。