竜王の歌姫

ギルバートと一緒に、様々な露店を見て回る。

そのうちの一つ、装飾品をメインで扱う店で見つけたそれ。
それは、丁寧に編み込まれた花の髪飾りだった。

(……綺麗……)

自然と目を惹かれ、じっと眺める。

「それが欲しいのか?」

隣からギルバートに声をかけられ、カノンは慌てて首を横に振った。

(こんな綺麗なもの、私なんかには似合わない)

『見ていただけです』

そう返して、カノンはさっとその場から離れるのだった。


その後も、いくつかの露店を見て回った。

「すまない、用を思い出した。
すぐに戻るから、ここで少し待っていてくれ」

そんな中でのギルバートの言葉に、カノンは素直に頷く。

「ありがとう。
君は気づいていなかっただろうが、今回は護衛も者たちも同行している」

ギルバートの言葉に驚いて、キョロキョロと辺りを見渡すけれどそれらしき人は見つからない。

そんなカノンの様子を見て、ギルバートが小さく笑いをもらした。

「あいつらは目立たないように紛れることのプロだからな。
それに、今回はなるべく離れてついてきて貰うように頼んである」

考えれば、竜王であるギルバートの外出時に護衛がつくのは当然のことだ。

「だからカノンも特に気にせず過ごしてくれ。
俺が離れる間は、護衛がついているから何かあれば守ってくれる」

ギルバートが心配してくれることが嬉しくて、小さく微笑みながらカノンは頷く。