ルーシーは頷く。

「……わたしだって、歌える……」

「じゃあ、今度はわたしがお客さんね!」

カノンはそう言って、空いているスペースに座り込んだ。
そしてルーシーが歌い出すのに耳を傾ける。

「ルーシーもまあ、悪くはないが……カノンの歌を聞いた後だとなあ……」

「ぼく、カノンねーちゃんのうたがもっとききたかったのにー」

「ねえあの髪型、またカノンのマネしてるよ。
いくら髪の色が似てるからって、どうやったってカノンにはなれないのに」

方々から漏れる不満。カノンはそんな人々に向けて「ねえ」と声をかけた。

「まだルーシーが歌ってるよ。ちゃんと聴こう?
それに私は、ルーシーのちょっとハスキーな歌声好きだなあ」

それは、カノンの素直な気持ちだった。歌声は、唯一無二のもの。
みんな違って、みんないい。それでいいじゃないかと。
だからこそルーシーが、そんなカノンの背中を憎々しげに睨んでいることに気づかなかった。

「どうして……? 
どうしていつも、あの子ばっかり……!」