まだ少し慣れないな。
最近では、短くなった前髪に触れるのが癖のようになってしまった。
侍女の仕事をこなしながらカノンはそんなことを思う。
いつものように仕事をしているのに、広がった視野で見る世界はこれまでよりも綺麗なものに見えるから不思議だ。
「ねえ」
次の持ち場へ行くために移動するカノンのことを、呼び止めたのはその声だった。
立ち止まって声の方へと振り向けば、そこには1人の男が立っていた。
「キミがカノン?」
この人は―――確か、フォーゲル国の王子・ラース。
遠目に姿を見かけたことはあったけれど、こうして対面するのは初めてだ。
背の高さは、ギルバートよりも少し低いくらいだろうか。
カノンにとっては十分高く、自然と見上げるような形になる。
「それで、キミがカノン……でいいんだよね?」
再び問いかけられて、カノンは慌てて首を縦に振る。
「ああごめん、声が出ないんだっけ」
ラースは思い出したようにそう言って、「YESなら頷いて、NOなら首を横に振ってくれればいいよ」と付け足した。
その言葉に頷くカノン。
でも一体、ラースは何故ここに来たのだろうか。
「歌姫様のお付きの人間は3人。
でも最近、2人は脱落しただろ?
だから残った1人はどんな子なのか気になって……会いに来てみた」
そう、にっこりと微笑むラース。
どう反応すれば良いか分からなくて、カノンも曖昧に笑い返す。
最近では、短くなった前髪に触れるのが癖のようになってしまった。
侍女の仕事をこなしながらカノンはそんなことを思う。
いつものように仕事をしているのに、広がった視野で見る世界はこれまでよりも綺麗なものに見えるから不思議だ。
「ねえ」
次の持ち場へ行くために移動するカノンのことを、呼び止めたのはその声だった。
立ち止まって声の方へと振り向けば、そこには1人の男が立っていた。
「キミがカノン?」
この人は―――確か、フォーゲル国の王子・ラース。
遠目に姿を見かけたことはあったけれど、こうして対面するのは初めてだ。
背の高さは、ギルバートよりも少し低いくらいだろうか。
カノンにとっては十分高く、自然と見上げるような形になる。
「それで、キミがカノン……でいいんだよね?」
再び問いかけられて、カノンは慌てて首を縦に振る。
「ああごめん、声が出ないんだっけ」
ラースは思い出したようにそう言って、「YESなら頷いて、NOなら首を横に振ってくれればいいよ」と付け足した。
その言葉に頷くカノン。
でも一体、ラースは何故ここに来たのだろうか。
「歌姫様のお付きの人間は3人。
でも最近、2人は脱落しただろ?
だから残った1人はどんな子なのか気になって……会いに来てみた」
そう、にっこりと微笑むラース。
どう反応すれば良いか分からなくて、カノンも曖昧に笑い返す。

